雨宿りの青空。桜、満開。
桜が満開になる頃――それは、新しいスタートを迎える人たちが、それぞれの場所でそっと一歩を踏み出す季節です。
入学、入社、異動、転職、引っ越し。
春は、出会いと別れが交錯する、人生の節目のような季節。
そしてこの時期になると、私の胸にも、ある懐かしくも少し苦い思い出が蘇ります。
私自身、父の仕事の関係で、幼い頃から何度も転校を経験してきました。
慣れ親しんだ学校、やっと打ち解けてできた友達、遊び慣れた公園――
そのすべてと、別れなければならない現実。
次に行く学校の場所すら分からない。
どんな人がいるのかも分からない。
話す言葉が違ったらどうしよう。
毎回、そんな不安と孤独を胸に、転校初日を迎えていました。
「また、ここでも一人になってしまうんじゃないか」
「なんで、私だけこんな思いをしなきゃいけないのか」
幼い私には、状況を理解しきれないまま、ただただ、両親の決断に従って環境を変えるしかありませんでした。
でも、不思議なことに、大人になった今――ふと、思うのです。
「初対面の人と自然に話せるようになったのは、あの転校経験があったからかもしれない」と。
転校というのは、いわば「自己紹介の連続」でした。
誰も知らない教室で、先生に連れられて入っていき、前に立たされて、「はい、じゃあ自己紹介してね」と促される。
たった一言一言に、全神経を集中させて、どうにか好印象を持ってもらおうと、声のトーンや話し方に気を配る。
あの時の、教室の空気の重さと、みんなの視線の集まり方は、今でもはっきり覚えています。
それでも、自分を表現し、相手に伝えようとする努力を繰り返したことが、今の「コミュニケーション力」や「傾聴力」の土台になっていると感じています。
社会に出てからも、面接や営業、打ち合わせ、初対面の現場がたくさんあります。
人と人との関係は、結局のところ「最初の印象」がとても大事。
そこから信頼を築いていく力――それを、私は転校という経験から得たのかもしれません。
面接をしていても、「この人、会話のテンポが自然だな」と感じる人は、兄弟姉妹が多かったり、学生時代に部活動や転職経験を通じて、多くの人と関わる環境にいた方が多いように思います。
今、桜の咲くこの季節にも、きっとどこかで、過去の私と同じように、不安な気持ちを抱えている方がいるでしょう。
慣れない土地、知らない人たち、新しい職場や学校。
自己紹介を求められる瞬間に、心臓の鼓動が早まる――
そんな体験をしている人は、決して少なくありません。
でも、きっとその「はじめの一歩」は、未来の自分にとって、大きな「力」になるはずです。
同じ目的を持った仲間に出会い、日々の小さな会話から、やがてかけがえのない信頼が育っていく。
桜は、一斉に咲き誇ったかと思えば、あっという間に散っていきます。
でも、その短い命だからこそ、美しく、心に残る。
まるで「今この瞬間を、大切にしなさい」と教えてくれているようです。
私もまた、あの頃の転校の日々を思い出しながら、今年も新たな期初の一歩を踏み出します。
不安や緊張があるのは当たり前。
でも、それを乗り越えた先には、必ず新しい景色が待っているはずです。
皆さんも、それぞれの場所で、新しい春を迎えていると思います。
ともに頑張っていきましょう!